新入生73名(夜19、昼24、通教30)の皆さんへの「ハガキ一枚」課題、ぞくぞく届いています。◆作品発表【第1弾】
今春の新入生73名の皆さんに、案内チラシ(5月1日文校ブログ参照)と所定の〈課題ハガキ〉を、4月末に手渡しないし郵送してあります。
ハガキのかわりに、メールで送っていただいてもかまいません。締切は5月24日(月)必着とします。提出作品は全て、「文校ニュース」に載せ、文校の多くの皆さんの眼に触れられるようにします。
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はやくも、今日までに20名近くの方から届いているのですが、その中から、沖末浩未さん(通教部/27歳)と中野華さん(昼間部/43歳)の作品を紹介します。 (小原)
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私のふるさと 沖末 浩未(通・小説・美月c 東京都杉並区)
緊急事態宣言が今日明日にも発出されようかという四月に、東京の会社に転職が決まった。案の定、上京して三日後に宣言は出された。銀座も渋谷も新宿も、車窓から駅名標を拝んだきりで、狭いアパートにずっと引きこもっている。
今のところ、帰りたいとも寂しいとも思っていない。この一年、家族とも食事を分けて会話を控えていたから、孤独は私の体の一部になっている。例えば、指に生えた爪みたいなもの。伸びてきたら切ればいいし、鮮やかなポリッシュを塗れば上機嫌になれる。
地元にいるとき、誰と付き合いがあって、どこに勤めているのか、ということが私を構成していた。道を歩けばすれ違う誰もが私のことを知っているのに、私自身はドーナツみたいに中心ががらんどうだった。コロナ渦ではそれが顕著になった。陽性が分かったら『コロナの人』になって、私だけではなく家族の仕事や生活が立ち行かなくなる。たぶんこの恐ろしさは、地方に住む者にしか分からない。
私の影響を私しか受けない生活は気が楽だ。ハミングしながらベージュのポリッシュを塗っていると、点けっぱなしのテレビに見覚えのある景色が映った。
留まっているかのように穏やかな小川に、白い石橋が掛かっている。川辺に柳が細い腰を下ろしていて、垂らした緑の髪を風に揺らしている。私が逃げ出したふるさとだった。
帰りたいとは思わない。でも、私はここが好きだった。何かで挟んだみたいに、指先がじんわりと痛んだ。
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文学学校入学にあたって 中野 華(昼・小説・大西c 大阪府豊中市)
私は四十過ぎた大人なのに、今までの人生で積み上げてきたものが何もありません。夢の実現のために努力するとか、仕事でキャリアを積むとか一切無縁で、あまりそれに思い悩むこともなく生きてきました。生活に困らないお金があって、楽しく暮らせればそれでいいや、と。
ですが最近、今のままで歳をとることが怖くなってきたのです。ゆるふわ、刹那主義も若いから様になるし許されるけれど、中年になってこのままではまずい・・・・・・。
これからどうしようと悩んでいた時に一番に浮かんだのが大阪文学学校でした。小説を読むのは好きですが、書いたことのない私にとって、この学校はハードルが高い。
今この文章を書くのもしんどい作業です。なのに一ヶ月後には合評のために小説を提出しないといけない。苦行でしかありません。この学校に入ったのは、今までラクして生きてきた自分に与えた修行だと思っています。
クラスの皆さんに自分の考えの浅さや頭の悪さを笑われても構いません。恥もかくつもりです。私は皆さんの文章や言葉から学びたい。