小説(エッセイ)入門講座(夜)
小説の冒頭を書く(Ⅱ)
津木林 洋(作家)
「小説修業は畢竟文章修業である」とある作家は言っています。文章修業とは自分の文体を獲得する修業のことでしょう。作品ごとにそれにふさわしい文章を探る、というのは理想ですが、現実は一つの文体を獲得するだけでも一生かかるような気がします。ともあれ、書き続けなければ修業にならないことだけは確かです。
スケジュール
- 5月19日(月)
- 最初に取り上げるのは吉田修一の「大阪ほのか」(『キャンセルされた街の案内』に所収)です。「もう、ここでよかっちゃないや?」という会話から始まり、四十歳を間近に控えた男たちの、結婚にまつわる話が描かれていきます。面白いのは結末が描かれていない終わり方、オープンエンディングになっているところです。こんな書き方もあり、ですね。
課題:会話から始まる話を書いてください。
- 6月23日(月)
- 次は小山田浩子の「卵男」(『小島』に所収)です。ですます調で書かれているため、読者は主人公から話を聞いているような感じになります。経験したかのような細部に安心しているとふっと異物が入り込んできます。日常の中にある違和感をさりげなく描くのに巧みで、小説の種はどこにでもあると思わせてくれます。
課題:ですます調で書いてください。
- 9月1日(月)
- 次は川上弘美の「真鶴」です。「歩いていると、ついてくるものがあった。」という意味深な文章から始まり、何だろうと思っているうちに小説世界に引き込まれてしまいます。それが何かは「わたし」の感覚なので、実体があるとは限りません。日本画でいう朦朧体のような書き方はこの作者の特徴でしょう。
課題:意味深な一行から始めて下さい。
備考
〔作品提出の方法〕
○まとまった完結した話を書く必要はありません。途中までの話でも構いません。
○課題が浮かばない方は、自由に書いていただいても構いません。ペンネーム可。
○課題、もしくは自由題のどちらかを本文800字程度で書き、それをpdfファイルにし、講座のある1週間前の月曜日までに、下記のアドレスまでメール添付でお送りください。
bunsyokoza@yahoo.co.jp
※ @は半角に置き換えて下さい
○提出された作品はすべて公開クラウドに上げ、そのURLをお知らせします。受講生はあらかじめ全員の作品を読んでおいてください。講座のとき作者による朗読は行いません。
○ネット環境のない方は、作品を事務局まで持参、もしくは郵送し、事務局の指示を仰いでください。
○作品を提出せず聴講のみの方は、上記アドレスまでその旨をメールしてください。公開クラウドのURLをお伝えします。
○質問、問い合わせ等は、上記アドレスまでメールしてください。
⦿まず15分間ほど、津木林講師がその回の参考図書について解説します。その後、提出作品すべてに一作ずつ、講師は詳しく鋭く批評をくわえていきます。作者コメントの時間を設け、会場から出る質問や意見にも懇切に答えていきます。