◆作品発表・第3弾・・・新入生<課題ハガキ>
今秋の新入生42名のみなさんに、提出をもとめている〈課題ハガキ〉は、4日前(11/26)から10人増え、29名に達しました。残る13名ののみなさん、延長した最終締切の12/4(土)までに届けてください。
所定のハガキではなく、メールで送っていただいた方が助かります。提出作品はすべて、「文校ニュース」に載せ、文校の多くの皆さんの目に触れられるようにします。
既着分のなかから印象的な作品を紹介する第3弾は、石川高広さん(昼間部・大西クラス/大阪市)と光トウヤさん(通教部・美月クラス/新潟県小千谷市)のものです。
第1弾は池田りらさん(通教部/大阪市)と木蓮さん(通教部/札幌市)の作品【11/20文校ブログ】、第2弾は江藤直樹さん(昼間部/名古屋市から通学)と澤田尚子さん(夜間部/大阪府摂津市)の作品【11/26文校ブログ】でした。 (小原)
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文学学校入学にあたって 石川高広
今年で三十六歳になります。大学卒業後ずっと同じ会社に十四年勤めてきましたが、会社で求められる立場も変わってきました。優秀な同期の中からは管理職へ昇進する者が現れ始めました。私は昇進していない方ですが、彼らと最も差を感じるのは会社への忠誠心の違いです。出世する同期は組織人として生きる覚悟を決めたように感じます。それは家族(金)のためであったり、上司、同僚、取引先の期待だったり、同期との競争意識であったり、覚悟を決める理由をまとめればこんな感じだと思います。
私には組織人として生きる覚悟ができません。そしておそらくこれから先も出来ないようにも思う。みんなと寄り添って生きることに吐き気がするのです。確かに寒さは凌げるかもしれませんが、それは自分に力がないことを認めているようにも感じ、それが悔しい。
小説を心から書きたいのかと問われると何とも答えられませんが、書いていると自分の頭が整理されていき落ち着く感じはします。作品を通じて自分がどんなヤツなのか表現しきれるようになれたらと思います。
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私のふるさと 「海のくるみ」 光トウヤ
くるみは海の食べ物だと思っていた。でもどうやら違うらしい。そのことを知ったのは、小学校高学年になってからだった。
私のふるさとは海に近い。十五分も歩けば海辺に出る。そのため、散歩に行くときは、自然と海辺に足を運ぶ。沖縄のように美しくはない、ねずみ色のさびれた浜辺だが、これはこれで親しみがある。
秋から冬にかけて、父が青いバケツを持って海へくるみを拾いに行く。木から落ちたくるみが川に運ばれ、浜辺へ流れ着くのだ。それらを水で洗ってアルミホイルの上に並べ、グリルで焼いた後、ドライバーで殻をこじ開けて食べる。そんなことを幼い頃から当たり前のようにやっていたので、くるみは海の食べ物だと思っていた。
だから山の幸として『くるみ和え』が出てくるとき、リスがくるみを頬張るイラストを見かけたとき、私の中には小さな違和感がある。間違えているのはこちらのほうなのに。くるみは海の幸として紹介されるべきだし、くるみの隣に描かれるのはリスではなく、貝殻や魚であるべきだと思う。
もうすぐ年末だ。めったに実家に近寄らない私も、このときばかりは帰る。恐らく父が集めたくるみを洗って待っているだろう。私は、ほんの少し塩気が効いたくるみを齧るため、こたつに入りながらドライバーを手に取るのだ。