新入生53名(夜15、昼17、通教21)の皆さんへの「ハガキ一枚」課題、早くも9名から届いています。◆作品発表・第1弾【夜間部・百武ひらりさん/昼間部・ゆうゆうさん】
今秋の新入生53名の皆さんに、案内チラシ(11月9日文校ブログ参照)と所定の〈課題ハガキ〉を、先週から手渡しないし郵送してあります。
ハガキのかわりに、メールで送っていただいてもかまいません。むしろ、その方が助かります。締切は11月26日(土)必着とします。提出作品は全て、「文校ニュース」に載せ、文校の多くの皆さんの眼に触れられるようにします。
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今日までに9名の方から届いているのですが、その中から、百武ひらりさん(夜間部/54歳)、ゆうゆうさん(昼間部/60歳)お二人の作品を紹介します。 (小原)
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文学学校入学にあたって「文学学校入学開講式に出席して」
百武ひらり(夜・小説・西村クラス 広島市)
部屋に入ると中央にテーブルがあり、周りにぱらぱらとパイプ椅子が並んでいた。私ははじめ、一番後ろの席に座ったのだが、なんだか最初から腰が引けている感じがして、思い切って、まだ誰も座っていない前から三番目くらいの席に座りなおした。開会を待っていると「あ、電車にかばん忘れてきてしもた!」と声に出しながら、慌てて部屋を出ていこうとする人がいた。黙って見ていると、独り言のように「あ、ここにあった」と照れ臭そうに頭をかいて、その人は、また席に座った。
入学開講式が始まった。歓迎のあいさつに続いて、朝井まかてさんの「新入生のみなさんへの言葉」があった。朝井さんが文校入学に至った経緯をお話されているのを聞いて、突然、胸が突き上げられ、涙が目の裏側に沸いてきた。つい二週間前まで小説を書くなど思いもしなかった癖に、すっかりその気になっている自分に驚く。
朝井さんは、大きな犬と出会う不思議なお話をしてくださった。チューターの先生方も次々とお話をしてくださったのだが、皆さんのお話は、私が今まで聞いたこうした会の挨拶とはまるで違っていた。それらは、一つ一つの小さな物語だった。私は、そのことに心底感動し、文学学校だものと妙に納得した。
開講式の前にぶらついた谷六も魅力的だった。今度入ってみようと思う店が何軒もあった。小説が書けなくても、この街にまた来られるならまあいいかと、ニヤニヤしながら帰途についた。
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文学学校入学にあたって「純愛小説が書きたい」
ゆうゆう(昼・小説・大西クラス 滋賀県大津市)
恋愛小説を書きたかったのです。
なのに、文校のある先生から、「あなたの書くものは欲望小説だ」といわれました。そう、私の書いていたのは、男からの一方通行の愛だったのです。この歳にもなって、そんなことにも気づけなかったなんてダメなジジイですね。
でも、書きたいものは、書きたいんです。私の欲望がたっぷりつまった小説を。ジジイの恋愛小説。いや、「純愛小説」が書きたい。
また、ある人からは、年寄りが若い頃の恋愛を思い出して書いても、ちっとも面白くないといわれました。そのとおり。だから、現時点での等身大の登場人物に純愛をさせたいんです。成功するかどうかは二の次、とにかく書き切ってみたい。この歳になって、純愛しちゃいけないなんて法はどこにもないでしょう。でも、現実には叶えられていないから、そのうっぷんを小説で晴らしたいのです。
純愛でも、日活ロマンポルノのような世界を描きたいのです。愛の他には何もいらないという世界を書きたい。そして「ただ、あなたの優しさが怖かった」と登場人物に言わせてみたい。
そんな小説が書きたくて、この学校に入りました。
ああ、純愛を書くより、純愛がしたい。