小説(エッセイ)入門講座(夜)

担当講師:
津木林 洋(作家)
半年3回/月曜日/教室開催
18:30〜20:30
在校生・修了生・一般とも「作品提出+聴講」は各回1,000円、「聴講のみ」は500円

小説の冒頭を書く(Ⅲ)

津木林 洋(作家)

 小説を書こうとする場合、誰の視点で世界を見るのかを決めなければなりません。一人称なのか三人称なのか、それとも二人称という特異な視点なのか。それに加えて、語り手をどうするのかも決めなければなりません。語り手という概念はなかなか分かりにくいですが、今回、それぞれの人称で作品を書いてみることによって、その感覚を少しは身近に感じてもらいたいと思います。

スケジュール

10月27日(月)
 最初に取り上げるのは村田喜代子の「茸類」(『八つの小鍋』に所収)です。村田喜代子は一人称でしか書かない作家の一人です。一人称では視点人物と語り手が一致しているので、語り手について考える必要はありません。視点人物と語り手と作者が一致している場合は、私小説ということになって、読者にこれは作者の経験かと思わせることができます。この作品はさてどちらでしょうか。

課題:一人称で書いてください。
12月15日(月)
 次は村上春樹の「蜂蜜パイ」(『神の子どもたちはみな踊る』に所収)です。村上春樹も基本は一人称ですが、この作品は三人称で書かれています。三人称では語り手は視点を自由に変えることができます。人物だけではなく、カメラの視点だったり、(すべてを見通す)神の視点さえ取ることができます。ただ、それを駆使して作品をまとめるのは至難の業です。この作品では淳平という人物の視点を動かさず、登場人物の説明に語り手の姿が垣間見られる形になっています。

課題:三人称で書いてください。
2月9日(月)
 次は倉橋由美子の「暗い旅」です。この作品は「あなた」と呼びかけられる女性の視点で書かれています。呼びかけている主体は作品中には登場せず、語り手としての存在であることが明確です。こういう二人称の小説を最初に書いたのはミシェル・ビュトールで、『心変わり』という作品は、ヌーボーロマンを代表するものといわれています。倉橋由美子もあとがきで、その作品にヒントを得たと書いています。

課題:二人称で書いてください。

備考
〔作品提出の方法〕
○まとまった完結した話を書く必要はありません。途中までの話でも構いません。
○課題が浮かばない方は、自由に書いていただいても構いません。ペンネーム可。
○課題、もしくは自由題のどちらかを本文800字程度で書き、それをpdfファイルにし、講座のある1週間前の月曜日までに、下記のアドレスまでメール添付でお送りください。
  bunsyokoza@yahoo.co.jp 
  ※ @は半角に置き換えて下さい
○提出された作品はすべて公開クラウドに上げ、そのURLをお知らせします。受講生はあらかじめ全員の作品を読んでおいてください。講座のとき作者による朗読は行いません。
○ネット環境のない方は、作品を事務局まで持参か郵送してください。事務局が手助けします。
○作品を提出せず聴講のみの方は、上記アドレスまでその旨をメールしてください。公開クラウドのURLをお伝えします。
○質問、問い合わせ等は、上記アドレスまでメールしてください。

⦿まず15分間ほど、津木林講師がその回の参考図書について解説します。その後、提出作品すべてに一作ずつ、講師は詳しく鋭く批評をくわえていきます。作者コメントの時間を設け、会場から出る質問や意見にも懇切に答えていきます。